嵩屋天狗堂~はてな支店~

オフロードバイクアリマス。

迷える森からの脱出。

好きなことの前途なら、いくらか多難でも頑張ろうと思う嵩屋天狗堂・番頭ののりまつでございます。前回、不完全燃焼な初陣でマシンも中破という憂き目を見ましたが、賢人の導きによって光明を見出したというお話をします。

 

 

 

 

土2号作戦「雨の森で賢人に挑め」

 

 

YAMAHAの誇るラリーレイドマシンは、かつて世界的なラリーが開催されていた地になぞらえ「Tenere」と名付けられてきました。そのTenereがラリー界を席巻していた頃から、Tenereを愛機とし、国内外のラリーに参加している人たちがいます。

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一口にTenereといっても色々ございます。

謎の人脈をあまた持っているMP姐さんの紹介で、今回この由緒正しきグループの片隅にお邪魔させてもらうこととなりました。

 

そして先日、初めてそのグループのツーリングに参加させてもらったのです。

 

行先は赤城山周辺の林道。そんな大ベテランがTenere700で連れて行ってくれる林道って、どんなところだか不安になります。「基本フラット」とは聞いていますが、フラットの基準は人それぞれだしなー。

 

 

 

 

集合

 

 

栗原川林道が通れた時は、いつも集合していた道の駅。その隣接のコンビニに集合となりました。天気は微妙だけど、中止の連絡はなし。

「なるたけ荷物は背負い、バイクには付けない方がよい。トップケースは外して」という賢人のアドバイスに従います。もとより心がけていたことで、我が意を得た心持ち。オフでは邪魔になるトップケースを外し、エンデュリスタンのサイドバッグに換装。オフ部分で荷物の一部を背負えるように、サイドバッグにリュックサックを詰め込みました。

 

ギリギリストののりまつですが、さすがに今日は早めに到着しました。少し待つと、2台の青いTenere700が。

一人はラリースト賢人Kさん。気さくでトークが軽妙洒脱。のりまつの魚丸を眺め、即座に不自然な点を看破するなど、さすがの眼力でもあります。マシンの方はガチオフ仕様です。純正のヤワいハンドガードはZETAのモノに交換され、出っ張ったクランクケースにもカバーが。右側はワンオフで作ったというカバーで、マフラーのジョイント部分もワンオフサイレンサー自体は安く購入したもので、コケてもいたくないそうです。

もう一人はカメラマン賢人Oさん。寡黙な印象で、マシンの方はほぼノーマルでしたがローダウン仕様となっており、パフォーマンスダンパーがついておりました。

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二人とものりまつより10ぐらい上かな。これからこのパーティーで、どんな旅が始まるやら。

 

 

 

 

賢人の導き

 

 

Kさん先頭、Oさんしんがり、のりまつは真ん中の編隊で、森に向かいます。わき道に入ったところで、Kさん停止。隣に来るよう手で指示がありました。ここでレクチャータイム。

 

内容はとても基本的なことで、これまでも何度も聞いてきたかもしれません。すなはち

・ハンドルグリップは、ドアノブを回す感じで握る

・すると肘を張る感じになるので、そのまま大きなボールを抱えるような姿勢を作る

の2点。

妻がスクールでこのように教わっているけど、オンだけかと思っていました。オフ歴40年の賢人が言うのだから、ホントに基本なんだろう、と思い直し、気を付けます。

特に今ののりまつは、先日の土1号作戦での結果が思わしくなく、解決策を渇望している状態。教えてくれることは何でもしまっせ!

 

それを意識して、ダートに入ります。Kさん、あっという間に消えるかと思ったら、絶妙に見える位置ぐらいでペースを維持しているようです。イントラ走りですね。その上で、再度停止、レクチャー2。

・ダートではスタンディングが望ましい。

・スタンディングは、膝を伸ばして行う。意識して曲げなくても、膝は勝手に曲がるから

の2点。そうか。スタンディングって、路面からの入力に備えるために膝を曲げていました。そのせいですげー疲れて、維持することができずに座っちゃっていた。伸ばしておいていいならだいぶ楽だよ。やってみよう。

 

スタンディングで、膝を伸ばしたまま走り出します。膝をピンと張った絶対曲げないマンにはなりませんが、基本伸ばしていていいと思うと苦しくない。それでいて路面にも追従できる。腕は大きなボールを抱える状態で、衝撃を吸収できる構えになっているので問題なし。イイ感じです。

 

分岐点でちょっと休憩の時にレクチャー3。

・外側の膝は、曲げる。

右カーブなら、左ひざが曲がります。すると、体が進行方向を向くんですね、勝手に。よくへそを向けるとか骨盤を回すというのがありますが、それと同じことと感じました。しかも、より呑み込みやすい。スタンディングならではの覚え方ですね。

 

これを実践すると、自然とバイクが向きを変えてくれるようになりました。だいぶ楽しくなってきました。あんなに乗れなかったTenere700を、ずいぶん操れるようになってきている感触を得ました。正確には、それまで乗っていたオフ車と同じように操れる感じがしてきた、と言ったところ。

 

路面が少し濡れていて、とても走りやすいコンディションではあったけれど、賢人の導きで短時間でここまで復活できた。すごいです。

 

 

 

 

雨の森

 

 

レクチャーを受けながらも旅は続きます。進路は本道ではない方へ取り「クマザサ」とKさんが呼んだ道(?)に入ります。入口に小さいターンを要する場所があり、そこに向けてアクション起こしたときに立ちゴケ!つまんなくコケ傷を作ってしまいました。

ふと先行したKさんを見ると、草むらの中でスタックしていました。救助に向かうと、草むらの中に無数に転がっていた50センチから1メートルほどの木のかけらが一つ、KさんのTenere700の腹部に刺さっていました。協力して抜き去りましたが、この木のかけら、怖い!

結局別の入り口から入ったのですが、ここにもその木のかけらが草の下に隠れていて、これに足をすくわれ、コケてしまいました。右のレバー、曲がりました。だんだんオフ車らしくなってきました(泣)

 

クマザサの道を下っていくと、複数本の木がまとめて横たわっているところに出くわします。さすがのKさんもTenere700でまたいで行くのは控え、エスケープルートを取ろうといったん停車しますが、うしろのOさんとインカムで何か相談している模様。

 

「撮影しまーす」とKさんの号令。もしや、カメラ賢人のOさんに撮影してもらえる?!LINEグループで、Oさんの撮ったと思しきかっちょええ写真が共有されていたのを見ているので、今日はそれを楽しみにもしていました。

 

写真を撮るべく先に行こうと直進したOさん。どうも横たわっていた木が見えておらず、ルート修正ができるギリギリのところでKさんに声をかけられ何とか停止。デカくて重いTenere700で、このルート修正は難しそう…と思って見ていたら、やはり坂を上り切れず谷側に足を着こうとして転倒。初ゴケだそうです。

谷側にコケると、起こすのは3倍難しくなりますが、3人で力を合わせて起こしました。Kさんが代走してなんとかクリア。ホッとしたのもつかの間、後ろを振り返れば魚丸君がお昼寝してるではないですか。1速に入れて、スタンドを落ちていた木っ端に立てて置いたのですが、ギアのバックラッシュ分わずかに前に出てしまい、スタンドが逸脱して寝てしまったようです。ここまでですでに3回。そのうち2回は一人で起こしました。もともと腰の調子が悪く、限界が近い。でもKさんがすぐ来てくれて、なんとか起こすことができました。

 

そんな苦労して、撮ってもらった写真がこちら。

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オラ、かっこいいだか?

 

その後もクマザサの道を下りますが、路面自体もイヤなぬるぬる感があることを感じていました。そして少し急で長めの坂に差し掛かると、先行のKさんの付けたブレーキ痕が目に入ります。これはブレーキかけても滑るだけで減速せず転倒を誘発することを意味します。このために車間は取っておきましたが、ぬるぬる路面を加速していく恐怖感は何ともいえない!たまらずクマザサの中に入ってみると、意外とグリップする。うまく停止して体制を立て直していると、後ろから来たOさん、やはり転倒してしまいました。正確には転倒する事で追突を避けた、と言ったところでしょうか。スイマセン、のりまつが止まってしまったばかりに。

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先行車のつけたブレーキ痕がおわかりいただけただろうか。

これのリカバリーを手伝い坂を下りきると、そこはKさん「ここに連れてきたかった」という場所。

あたり一面をクマザサが覆い、そこから生えるまばらな木立が陽をさえぎり、うっすらと霧が漂う神秘的な場所。折から降り出した霧のような雨が、サーっと葉をたたきます。なんとも気持ちのいい空間です。

 

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ここで、撮影会。

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KさんのTenere700、ガチオフ仕様。

 

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OさんのTenere700。ローダウン仕様。


 

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のりまつと魚丸。

 

ここに来るまでに何度もコケ、いろいろな学びを得ました。雨が降っていたのと、すでにお昼が近かったこともあり、下山しランチタイム。ふもとに降りると、気持ちのいい天気になっていましたが、この後の天気も快方には向かわない予報だったので、ランチ後に解散となりました。

 

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水沼駅前にあります。看板はウソじゃない!

 

 

 

 

史上最短の作戦

 

 

振り返ると、今回の作戦は嵩屋天狗堂史上、最短だったかもしれません。9時過ぎにスタートし、12時にはふもとに戻っている。距離にしても10キロに満たない。

 

しかし反面、史上最大の戦果を得た作戦となったかもしれない。森の霧雨のようにモヤモヤしていた精神状態が、下山したころの青い空のように晴れ渡っています。

「楽しくない」と感じたTenere700でのダート走行が、一転「楽しそうな題材」に様相を変えている。そして、教えてもらったことが空ろとならぬよう、早く次のダート旅に出たいと、前向きな気持ちが戻ってきている。

 

何度もコケて本格的に「外装慣らし」が済んで、レバーも曲がりました。人麻呂もレバーが曲がっていました。他の2台は傷だらけです。きれいにしておきたかったけど、この作戦ですっかり嵩屋天狗堂の機体らしくなり、同じ目線の高さになった気がします。

 

 

 

土2号作戦の戦果は、大きな出会いのおかげで前回の失策を補って余りあるものとなりました。やっぱ、オフロードは楽しいッス!

 

 

 

次はどこに行こうかな。