Tenere700魚丸、ジャブローに散る!
マシンの違いが戦力の決定的な差ではないことを思い知る嵩屋天狗堂・番頭ののりまつでございます。僕みたいな下級のパイロットがガンダムに乗ったって、ザクすら墜とせないで自滅するんですよ、きっと。
やたらとひがみっぽい書き出しですが、Tenere700魚丸の主戦場、オフロードでのインプレッションをお送りします。
土1号作戦「僚機と共に樹海を突破せよ」
オフロードでの初めての作戦となる今回の舞台は、群馬県のダート。以前、KLX250兆太郎で行ったときは、さほど荒れた印象はない林道だったので、初めてでも大丈夫かと思って挑んだのでした。
この林道で、初めてTenere700でオフロードに足を踏み入れてみてのの感想・・・
コイツ、オンロードバイクか?!?!
まず、リア周りからぶっ壊れたような音がガチャン!バン!ゴカン!とやたらと聞こえてきて突き上げがすごい来る。そして小石にいちいち前後のタイヤを跳ね飛ばされ、アクセルが入れられない。サスペンションが、路面からの入力を全然いなしてくれていない感じ。この路面にこんなハーダーサスは玄人向け過ぎやしねえっすか?!コケたくないという気持ちが強いせいもあってか、ちっとも楽しくない。まるで陸に上がったゾックだ。
命からがら、先行した皆が休んでいるポイントに着くと、皆さん口々に「今日のこの林道、怖いんね」と言っています。
そうか、乗りなれたマシンでベテラン勢も怖いってことは、道が悪いんであってマシンが悪いわけではないんだな。少しホッとしました。
しかしあの跳ねっぷりは看過できない。690ENDURO人麻呂でそうしていたように、ダンパーを伸縮前後すべて「一番SOFT」に設定しました。ちなみに空気圧は未調整で、出荷時のまま。パンクするのが何より嫌なので、普段から空気を抜く習慣がないのです。
ダンパーの調整により、それまでのようにギャップに跳ね飛ばされることは少し減り、いくらか安定してきました。しかし左右の倒し込みが鈍くなって、重ったるくなった感じ・・・。
しかし後半のフラットな道は、まあまあ快適に走れました。コーナーの立ち上がりで少しアクセルを入れ込むと「ぬべっ」と粘りながら車体を前に進め、大きなスライドはしない。柔らかくしすぎたか、ちょっとわかりにくくてコントロールしにくい感じ。もっと思い切ってアクセル入れても大丈夫なのかな・・・まだまだ研究の余地があります。
こうして、最初の林道はハラの探り合いみたいな感じで走り終えました。
次の任務地は、秋鹿大影林道。フラットだけど、浮いていない中ぐらいの石が多く、かなりガタガタした道です。
ダンパーを弱めたことでだいぶ快適にはなりましたが、どうも操縦しにくい。スタンディングするといくらか操縦しやすくなりますが、疲れちゃうし地面から体が遠くなることの怖さもあって立ってらんない。
座ると相変わらず思いどおりヒラヒラと荷重移動できず、いつもと違う粘ったリアの挙動で、なんとなくスッキリと曲がれない。うまくシンクロできないせいで超鈍足走りでフラストレーションがたまる。
その次の林道もそんな風にモヤモヤ走っていたら、何でもない左カーブで突然現れた浮き砂にリアを滑らせ、リカバリーできず左を下に転倒!!そういえばここは、いつも滑って転びそうになる場所でした。くっそー。とうとうやっちまった。
普通こうしてコケた時、下になる足にバイクがのしかかってくるのですが、その感覚が全くない・・・左足が下敷きになる事もなく、かすり傷一つ負っていない。そう、HEPCO&BECKERのエンジンガードが、いい仕事をしてくれたのです!これは素晴らしいと思いました。コケた軌跡を見ると、タイヤが滑った跡の数メートル先に、ガードが土を削った跡がありました。ガードには派手に擦り傷がついていて少し曲がったみたいですが、さっそくお役目を果たしてくれました。
しかし走りの方は相変わらず。そのまま要領を得ずダートをもたもた走り、1キロの直線ダートでフラストレーションを吐き出しましたが、初めてのダートは、イマイチスッキリしない戦果となりました。
ダートを走り終わった後、真夏の絶景を楽しむべく野反湖を目指しました。峠の休憩所のある駐車場は、砂利の斜面。ここで絶景をバックに魚丸君の写真を撮るために車の間に停めてしまいました。
するとどうでしょう。そこから動かすことができなくなってしまったではないですか!
引こうにも勾配があるし重いし、踏ん張ろうにも深い砂利に足を取られるし、押せば柵や車に激突してしまうし、スタンドターンも深い砂利に埋まるのでできないし。いつものつもりで考えなしに突っ込んだら、とんでもないことになってしまいました。
こういうところは、やっぱり普通のオフ車じゃないですね。普通のオフ車なら、はずみの理・車の理・てこの理などを活用して、どうにでも投げられるのに。
困っていたら、仲間のKKさんが助けてくれました。さっき転んだ時もさっと駆けつけ手を貸してくれた。ぶっきらぼうだけど優しいライダー。ぼくもこういうおとなになるようにがんばるんだ(手遅れ感)
魚丸、中破!!
澄み渡る空と湖水とは裏腹に、ソフトもお預けでスッキリしない30分程の休憩時間を終え帰路に就こうとバイクに戻ると、何やら車体の下の地面が黒い液で汚れている・・・?
なんと、魚丸君がオイル漏れを起こしているではないですか!どうして今?転んだ時は大丈夫だった。この駐車場でイゴイゴしてた時も漏れてない。それが今になってナゼー?!?!
いったい何が起きているのか、ベテランのおじさんたちと検証。どうやら曲がったガードがオイルパンを押して接合部をゆがめてしまい、そこから漏れてしまっているようです。
HEPCO&BECKER社を含むいくつかのエンジンガードは、メイン部分をパイプで形成していますが、車体にマウントするためのネジ穴が開いている部分は板状になっています。
この板状のステーからパイプ状のメイン部分が生えている状態ですが、今回はこの板状のステーが大きく曲がってオイルパンを圧迫していたようです。
オフロード駆け出しのころ、地の果て「大弛峠」でSUPERSHERPA兆治がオイル漏れを起こし、遭難しかけた記憶がオーバーラップします。ここもまた、地の果て。最寄りの駅、インターチェンジ、バイクショップのあるような大きめの街までは50キロ以上はある。ここで不動となれば、また数時間の待機を余儀なくされ、夏でも高所であるが故、寒さに震えるであろうことは想像に難くない。さて、どうしよう。
葛藤。そして帰還。
幸いオイルのレベルは最大量のちょっと下ぐらいで、結構残っている。エンジンをかけてみるが、それで急にたくさん漏れ出すわけでもない。そして野反湖からはしばらく下りしかないので、エンジンをかけなくてもある程度のところまでは行ける。だましだまし帰れるかも・・・。
しかし実はもっとヤバいトラブルが潜在していて、迅速な対応をしなかったせいで大故障に陥ってしまったら・・・そう考えるとここで動かず、レッカーを待った方がイイ。保険で帰りの交通費までカバーできるから、時間以外の被害はないんだし。そいつが大人のハンダンなんじゃないか・・・しかし、ここまでレッカーが来るのに何時間かかるんだろ。帰ってから車体が帰ってくるのも、これまでの経験上すごい時間かかるし。
迷った挙句、とりあえず下山することに。オイルパンを圧迫していたエンジンガードはネジを緩めて干渉しないように処置して。エンジンかけないで、重力に任せて坂を下る下る!万沢林道出口あたりから勾配が緩くなったり遅い先行車に追いついたりで時々エンジンをかけて走る。そうして道の駅六合に着いて、状況確認。オイルは漏れているものの残量にほとんど変化はなし。イケる・・・かな。
長野原の街にあるコメリに、4st用オイルがあるか電話で確認、あるとの事だったので寄ることにして、ここで皆とはお別れ。いつまでもノロノロに付き合わせるわけにもいかないし、対処の方向性もついた。
コメリでもオイルの減りはなかったので、エンジンをかけ低負荷走行で帰路に就きます。高速は使わず、加減速はゆっくり。登り坂は無理せず。10キロごとにオイルの残を確認しながら走りました。漏れは続いているものの、補充しなければいけないほど減ってはいない。
そんな感じの綱渡りをする事約2時間。とうとう購入先のレッドバロンに帰還しました。結局コメリで買ったオイルは使わずじまい。
時間が経ってからオイル漏れしだしたのは、それまで熱くて圧迫に合わせて変形していたオイルパンが、冷えて柔軟性を失い接合部にゆがみを生じさせてしまったからではないかんとの分析でした。コケた後は、落ち着いてアレコレ点検しないといけないですね。コケた現場で気づいていたらすぐに対処できて、オイル漏れまではいかなかったかも。
後日レッドバロンから電話があり、オイルパンの交換だけで済むとの事。大けがにならずに済んでよかった。
土1号作戦、戦果は?
機体は中破で帰還。パイロットは無事。樹海は何とか突破できた。あとは脳内フライトレコードをフィードバックし、新たな課題を整理し次善策を講じてみます。
総評すると、これまで乗ったオフロード機であるSUPERSHERPA、KLX125、KLX250、690ENDURO、それに妻のSL230ローダウン、YY氏のWR250R。これらの中で唯一「楽しくなかった」。他の機体は、質は異なれど楽しい事には変わりはなかった。が、Tenere700は、終始楽しく乗ることができなかった。
それは690ENDURO以上に持て余すパワーと重さ。転ぶことへの恐怖(ケガと財布)。前に行こう行こうと焦る気持ち。そんなことが心を埋め尽くしてしまったから、かなと。
ま、振り返れば690ENDUROもしばらくはそうだったから。要するに腕と慣れと研究が全然追いついてないってことです。マシンが悪いんじゃない。わずかながら、フラットな路面では素性の良さが垣間見えていたし。
しかしどうしたらTenere700で楽しく林道を走れるようになれるのか。いわゆるアドベンチャーバイクと一線を画す、ホントのオフロードバイクとしてお迎えしたんです。絶対に楽しく乗れるようになりたい!僕はきっとそれができる子!
それにはまず、状況を分析しないと。
そういえば乗っている最中、あるアクションをしていたことを思い出しました。
それは座って走っている時、無意識に体を前に前に持っていこうとしていたこと。もちろんタンクに阻まれて前に行くには限界があります。これってやっぱり、オフ車としてはハンドルが遠いってこと??
美ヶ原で出会ったTenereさんは、ハンドルを近くしていました。その方がいいのかな・・・?
ラリーストの三橋さんは、ラリーシートがあると良いと言っていました。確かにラリーシートなら、もう少し取りたいポジションに座れる・・・けど、シート高が35mmぐらいアップするらしい。
とりあえず、美しTenereさんの使っていたZETAのハンドルバーライズ&オフセットのパーツを使ってみよう。
あとは・・・ビッグオフの為のスクールでも探してみようか。気持ちは募るばかりだけど、他に次善策が浮かばない。
もう少し苦悩の日々が続きそうです。楽しい方の苦悩ですけどね。