嵩屋天狗堂~はてな支店~

オフロードバイクアリマス。

さらば青春のオレンジカラー!

一期一会という言葉が嫌いではない、嵩屋天狗堂・番頭ののりまつでございます。バイクは道具で機械だけれど、人は勝手に自らの思いを入れ込むものですよね。



退役。


ここのところ、新しく迎える予定のTenere700の事ばかりを記事にしてきました。楽しみであるのですが、それに伴い一つの別れもあるのです。

令和2年7月12日、KTM690ENDURO「人麻呂」が嵩屋天狗堂から退役しました。
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思い出を振り返る


約5年間、37000キロ走った愛車とのお別れ記事なので、恥ずかしげもなく自分語りしたいと思います。

そろそろ身を固めようと考えていた6年ほど前。2台あるバイクを1台にするために色々考えていましたが、オフの楽しさとロングツーリングの快適さを併せ持つマシンは、そうそうあるものではありませんでした。少ない中で候補に挙がったのがKTM690ENDURO(R)。

初めはKTMなんて、頭のネジがぶっ飛んだレースバカかオタクみたいなヤツが乗るもんだと思い込んでいました。同時に羨望でもあり高嶺の花だとも思っていたのです。ですが一応探してみると、意外と現実的な値段のモノもあることが分かりました。実車を見に行くと、やはり910mmのシート高と硬い乗り味に怯みました。店の兄ちゃんもなんかぶっきらぼーだし(後日、このにーちゃんにはたくさん世話になりました)。やっぱなんかハードル高いな、KTM

しかししかし何となくあきらめきれずネットを漁っていると、ちょいちょい上位に出てくる名前が。彼の作るブログ記事の内容から、バイクの事もさることながら、彼の人となりにも興味を持ちました。そしてネット上でナンパを試みます。ナンパの方法は「自分もブログを作る」。そうして開店したのが「嵩屋天狗堂はてな支店」でした。初回の記事はほぼ自己紹介。それも彼とお近づきになるがためでした。そんなこんなでナンパに成功、一緒にツーリングできることに。

ツーリングの日は、快く試乗させてくれ(しかもダートで)ました。そこで得た感触こそ、購入の決定打となったのです。彼無くして690ENDUROとの出会いはありませんでした。

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すでにバイクは引退しているが、この時はレンタルバイクで現れました。

これならダートもロングも行ける!と確信しましたが、購入したのは旧式(2010年式)の、しかもRがついていないもの。試乗の時の感動を得られないまま、四苦八苦する日々が続きました。旧式だから悪いのか。やはりKTMはクセがあって乗りにくい代物なのか。シンクロできるまで、ムキになって乗りまくりましたが、なかなか光明を見いだせないでいました。

そんな状況下で光となったのが、やはり専門家。前出のKTMのディーラーのぶっきらぼーなにいちゃん。とある整備を依頼した時に、いろいろ教えてくれました。というか、間違いを気づかされました。
KTM-GUNMA |

そのきっかけとなった工事がヘッド廻りのオーバーホール。実際に工事でヘッドを開けたところ、白いゲル状の塊がべっとり、ヘッドの裏についていたそうです。これは文字通りのコレステロールだそう。

燃費運転、通勤等の15分程度の走行、アクセル開けず回さずに走る事。こうしたことがことごとくストレスになりこういう状態を作ってしまうのだとか。エンジンに火を入れたからには、一度はチンチンに熱くなるところまで回してやって、こういうコレステロールを焼き切ってやる必要があるとの事。

パーシャル域でのギクシャク感もついでに相談したら「パーシャル?・・・フン」と鼻で笑い「答えが欲しけりゃ4000以下に落とさねぇように回してみるこったな」とだけ言いました(だいぶ脚色していますw)。

要するに、回せ、と。エンジンにもマシンコントロールにもそれが一番いい!との事でした。
パワーがあるので怖いけど、思い切ってダートで、1速落としてぶん回せるようにして走ってみたところ、途端にショックアブソーバー一式(広義)が動き始め、信じられないぐらい素直なマシンになったのです。スピードレンジを上げ、サスペンションを動かせば動かすほどWPのアシがよい仕事をして、しっくりくる。まるで2ストマシンのように、ガーっと突っ込んでガツンとブレーキを効かせ、グァーっとアクセルを入れ立ち上がる。少しテールスライドしても不思議と怖くない。なるほど、こういう事だったか。

最終的に良いタイヤのマッチングもつかめて、オフロード走行がめっぽう楽しくなっていたところでした。ちなみに最終的に「ピレリMT21」でした。サイズ的に選択肢があまりなく、ちょうどいいのがなくて苦労しました。高いか固いかしょぼいか。高バランスだったのがMT21だったのです。ロードノイズが半端なくうるさいけど。

こうして徐々にシンクロしてく過程は、振り返ればとても楽しかった。その集大成のように、最後に走った青木村の名もなきダートは最高でした。深緑がきれいで、モトクロスコースのように走りやすく、人車とも気持ちよく走れました。



SSTRスペシャルマシン


KTM690ENDUROは、腐るほど書いてきたように、高速巡行もダート走行も気持ちよくできる稀有なマシンです。そんなマシンが一番ポテンシャルを発揮したなと思うのがSSTR。

日の出に太平洋側を出発し、チェックポイント(主に道の駅)を通り、石川県羽咋市宝達志水町にまたがる千里浜を目指すものです。ルートは自由、制限時間は日没まで。ずっと高速でカッ飛んでもいいし、ずっと下道でトコトコ行ってもいい。間に合いさえすれば。

純然たるオフ車である690ENDUROなので、ダートをルートに入れ込むことができます。入れ込まないと、ENDUROの名が泣く(?)。2016・2017・2018・2019と4回参加しましたが、すべての年のルートにダートが入っています。特に2017はかなり焦ることが起こりましたが、今となっては思い出深いです。

高速を使ったロングツーリングができてダートも楽しめる。SSTRではダートの分、人より楽しめたと勝手に思っています。それで時間がギリギリになり、ルート変更を余儀なくされましたが、それもまた一興。振り返ればルート変更していないのは2018だけです。

690ENDUROで走ったSSTR、楽しかったなぁ。君と見た千里浜の夕日は忘れない。

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SSTR2017。泥ハネはオフロードバイクの証。

エピローグ


初めは「人麻呂、思春期」と語りました。乗り手に迎合せず、ナイフみたいに尖っては触るものみな傷つける感じ。
しかしそれも、有り余るパワーを存分に発揮してもらうことで仲良くなれました。それはさながら、夕日の河原で取っ組み合いのけんかをして、痛み分けして、ともに空を仰ぎ大の字になり笑い飛ばした、昭和の青春ドラマの感じでしょうか。

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妻と河原でタンデムツーリング。ダートでもタンデムこなすコシの強さ!

もし金持ちになったら、最新のENDURO-Rが欲しいなぁ。あ、でもカラーリングは人麻呂君のがかっこいい。正面からは無地で地味だけど、サイドにまわると大胆に、図々しく、傲岸に「KTM」って書いてある。デザイン的に一番気に入っていいたところでした。

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気に入っていたロゴに抜けるような青空。

ともあれ、ホント、楽しい青春でした。



さーて来週の天狗堂さんは


690ENDURO「人麻呂」の後継機、Tenere700「魚丸」の就役(納車)は、多分1週間以内になると思います。その喜びについて語った浮かれポンチな記事を上げたいと思います、余裕があれば。



今日はバーボン!よき別れと出会いに乾杯ッス!