KLX250、旅仕様!
ガソリンの匂いも、少しなら嫌いではない嵩屋天狗堂・番頭ののりまつでございます。反省しても喉もと過ぎればなんとやら。そうならない様に、失敗したらきちんと振り返りましょう!というような話をします。
ちなみにこの記事は、去年の今頃書き始めています。なので一年もかけた大作です(違
KLX250について
時に20世紀末。世界中のモトクロスシーンを震撼させた2サイクルレーサー達。ヤツらのチャンバーからとどろく音は狂気に操られ、表彰台での栄誉をほしいままにしていた・・・
これに待ったを掛けるべく4サイクルで挑んだのが、カワサキ。そこで製造され世に出たのマシーンこそが「闘う4スト」の異名を持つKLXのルーツ!
・・・それから10余年。チキチキにとんがっていたKLXは徐々に重く、丸くなっていきました。その末裔が今、嵩屋天狗堂に配備されているKLX250(キャブ・2006年式)。名を「兆太郎」と発します。
トレイル車として、気に入らない点が見つからないほど気に入っているKLXですが、のりまつの用途として致命的なのがタンクの小ささ。
きっとこれはモトクロッサーの血統の名残。他にエンジンのかかりが悪いなどの弱点も有名ですが、幸いウチの兆太郎、かかりはいい。インジェクションのKTM690ENDUROよりもいいです。
SSTRの楽しみ方
前回のSSTRの記事でも述べているように、2020年はこのKLXでSSTRに参加します。参加すると、3日で1300キロ以上は走るツーリングになります。不肖のりまつ、元はGPZ900Rを駆り、それ以後も650ccの690ENDUROのパワーで長距離ツーリングをこなしてきた身。250cc単気筒のマシンで1300キロは少々辛い。と思ってました。
しかし周りを見れば、19馬力のセローで参加している人は数知れず。そればかりか同じKLXでも125で参加する猛者も散見され、果てはモペットまでいる!これはつまり、まったり構え下道でトコトコ歩くように転がせば、それもまたきっと別の楽しみ方になるに違いない!という事?!
発想を転換してみれば、また新たな楽しみができてしまいます。不安でアセアセとゴールを目指すのではなく、グランドツーリングを楽しむ感じ。制限時間があるから、いざという時に高速で飛べる250ccはジャストサイズかも。
それ以下だとギリギリなアドヴェンチュアになって、やっぱりアセアセ。いざという時に高速で飛べないから背水の陣的ですね。しかし現実にはたくさんの原付がSSTRを完走している。コレ、すごいと思います。
ツアラーに変身させてみる作戦
とはいえ!のりまつ的には背水の陣はキツイ。そしてマージンを残してトコトコとグランドツーリングを楽しむ為には、やはり幾つかの見直しも必要です。
まず航続距離。KLX250キャブはだいたい180キロ。コレでは困ります。山中で給油難民になる事は必至。
次にギア比。現在は純正14Tから13Tに変更しています。軽快で楽しくなりましたが、ロングツーリング向きではない。
最後に積載。荷台がないせいか、先日リュックをリアフェンダーにくくりつけてオンロードを走っていた時、丸ごと落ちて無くなり、それっきり出てきません。キャリアがあれば・・・
というわけで、ツアラー化、決行します。
ビッグタンクよ、大志を抱け?
KLX250(キャブ)用ビッグタンク、調べてみたら幾つか種類があるみたいです。
だいたいこの3つ↓
Acerbis
http://www.27bashi.com/fuma/disp.php?good_id=171510
IMS
Clarke
http://www.27bashi.com/fuma/disp.php?good_id=171010
無加工で着くらしいので、大志を抱くClarkeにしました。他の2つはファンを取り除く必要があるとの事。ファンは無いと困るかなー。
Clarkeビッグタンクは風魔プラス1で取り扱っているようですが、少しでもケチる為に直接Clarkeに注文しようと試みます。
が、配送や支払の無難そうなのを選択していったら、結局風魔プラス1で買うのと大差ない値段に。
何かあった時に対応できないし、やっぱ業者に任せよう。ちなみに納期は1ヶ月弱でした。
そして届いた、ズダボロの箱。箱はひどいモンでしたが、それを見越してか箱の中は色んなもので全力で養生してあったので、商品は無事でした。開封の義?スイマセン、夢中で引っ剥がして写真撮り忘れました。
Clarke、来日!
色は黒を選びました。Clarkeビッグタンクは樹脂製。樹脂タンクといったらナチュラルの半透明カラーが定番ですが、それはレーサー属性のマシンの話。キャリアをつけるような今のKLXには、レーシーな半透明より統一感のあるボディ同色がいいかなって。ガソリンの残量は、どうせシュラウドが邪魔で見えないみたいだし。
開封してキャップを開け、逆さにして振ってみると・・・情報どおり。削りカスがパラパラと出てきました。同商品を購入予定の方、絶対確認したほうが良いです。特に黒タンクでガソリン入れちゃったら、カスが浮いてても見えないし。
施工
兆太郎君の、シート・前後のシュラウドを外します。#8のレンチ1本で全部外せます。すばらしい。カワサキもたまにはいい事をする。
純正タンクを外す前に、燃料コック(説明書にはpetcockと標記されています) をOFFにして、コック下側から出ているキャブに繋がるホースを外します。そしてフレームから燃料コック本体を外します。
※燃料コックについて
ホースを外すときに注意したほうが良いのは、いつの間にか燃料コックが壊れている場合がある事。中のパッキンがちぎれてコックが機能していないことがままあり、この状態でOFFにしてもガソリンは止まらずに、ホース外した瞬間に出てきます。
コックのパッキンの図↓ かわいいっしょ?
確認するには一度OFFにしたまま走って見る。エンジンがガス欠を起こさなかったら、コックが壊れています。壊れていたら、タンク交換のついでにコックの修理をしたほうが良いです。
燃料コックの構造は、表面の「res/off/on」と書かれたプレートを止めている小さいネジを2つ外すと、中にうねったリングが入っていて、これがバネの役目を果たしコック本体とパッキンを押し付け、機密性を保つ仕組みになっているようです。なので表面のプレートを外すと、ガソリンが飛び出してきます。
このミス、やっちゃいました。ガソリンがスプロケの刺さってるシャフトのシールを傷めてしまったのか、オイルが漏れるようになりました。ちなみに修理自体は、上のパッキンとその中のOリングを交換すればいいだけですが、スムースに動くようにするにはうねった輪っかのバネとネジの締め具合をうまいことやりくりしてセットするなど、ちょっとコツが要りました。
で、無事にコック本体をフレームから外したら、タンクを止めている左右と上のボルト(やはり#8のレンチで可)を外し、コックに気をつけながらタンクを持ち上げます。この時長いエア抜きホースが2本付いてきますが、気にせず一緒にすべて引き抜いちゃいます。
取り出したタンクは形が安定しないので、何か台を用意しておいたほうがいいのかも。安置したら、ガソリンを抜いてもいいかな。上の蓋を開けると勢いが良くなります。ちなみにのりまつは、この日のために燃料をギリギリまで減らしておいたので地面に置いても大丈夫でした。ガソリンが抜けたら、ついでにコックのパッキンを交換しておいてもいいかもですね。ここが逝くのはKLXの持病っぽいです。
さてここでフィッティング。事前の情報では、イグナイターを止ているボルトの頭が当たるということ。うーん、なんかギリギリ。でも入らなくもない。ラッキーな物件に当たったのかな?
このボルト、イグナイターのアースも取っているようなので下手なボルトに換えるのは避けたいなーと思っていました。換えずに行って見ます。
→後日、やっぱ心配なので替えました。
他のネジ穴も、まるで専用品のように(専用品ですが)ぴったりと合います。色々心配していたのにウソみたい!しかし、いったいどこで安定しているんだろう。フレームの両脇にある純正のゴムからは浮いているし。
よくわからないけど、フレームをゴムで養生してみることにしました。使用するゴムは、どこのお宅にも必ずあるタイヤの廃チューブ。
これを切って使えば経済的ですね!ブチル系両面テープで貼り付けましたが、意味があるやら、どうやら。
もう一つ、タンク本体がエンジンにより近くなりそうだったので、下面に断熱シートを貼っておきました。意味があるやら、どうやら。
次に、純正タンクから色々なものを移植します。まず、吐出口2つ。ひとつは常用(onの時に吸い込むところ)の長いの、ひとつはリザーブ用(resの時に吸い込むところ)で短いの。異物をろ過する為か、棒状のパーツの先端付近は細かい網状になっています。
ビッグタンク側はテープで養生してありますが、これをはがすとパッキンと削りカスが着いてきます。常用とリザーブ用を間違えないよう、一つずつ移植。
説明書には、大きい字でTHREAD SEALANTを使う事を勧めています。これは何ぞや、と調べましたら、ガソリン等への耐性のあるシール剤で、緩み止めのようにネジに使うものだそう。近くの南海部品に行ったら置いてありましたが、8gで1400円・・・高い!でもガソリン漏れの憂き目は避けたいので購入。
そして説明書、大きく太い字で何事か書いてあります。「NO MORE THAN 5LBS OF TORQUE PRESSURE」だって。きっと締め付けトルクの事でしょうが、LBSってなんだんべ?
ググると、「LB」はポンドと読む。が、「LBf」はあるけど「LBS」はない。その上「LBf-in」とか「LBf-ft」とか。どうも「in」はインチ、「ft」はフィートのようです。たしかにトルクの単位は長さがついてくるけどキロ・ミリでなくインチ・フィートで書かれているからややこしい。単純に10の倍数掛ければいいってワケじゃなくなる。しかもこれ換算を間違えて、オーバートルクで樹脂のねじ山をナメちゃったら、タンク自体を買い換えなきゃいけなくなるかも。
それは困るので、さらによーく調べると、1ポンドは「LB」で、2ポンド以上は複数形(?)で「LBS」と表記する事もある、と言う事が解りました。「f」はもう無視でいいや。
そして「-in」「-ft」の違い。説明書には標記がないので、換算してみるしかない。
結果、「5LBf-in」では6.8Nmほど、「5LBf-ft」では22Nmほど。
レンチは#17でも母材が樹脂だし、小さいほうでやってみるのがいいですよ、やっぱ。
ということで、緊張の締め込み作業。トーニチの高いトルクレンチで6.75Nmに設定、締めこみます。シール性を上げる為か、締めこむだけでもまあまあ力が要る。そしてパッキンがつぶれながら更なるシール効果をかもし出す。そろそろつぶれきったかな、というところでトルクレンチが「カチ」といった。うん、ちょうど良さそうかな。
なんとなく手ごたえを得て、リザーブ側も移植。なんかがっちりシールされた感じがして満足!
次に燃料コックを移植。ちょっとホースが古そうだけど、まあ大丈夫でしょ。しっかりはめ込んでおきましょ。
さて、いろいろ小細工と移植が済んで、ついにインストールする時が来ました。フィッティング時より、ちょっと渋い。ここで力むと、リザーブ側の吐出口を壊してしまうとの事前情報もあり、慎重に。
確かに若干リザーブ側がフレームに干渉しそうになっている。あとは断熱シートとゴムシートの厚さで、すこーし入りにくくなっているだけのようなので、すこーし力をかけてネジ穴をあわせる。そしてわりと無理なくねじが通りました!3点止めて、次の課題はシートがフィットするか。
ところがこれも、まるで専用品であるかのように(専用品だけど)ピタッとマッチ。事前の情報では皆苦心していたようですが、フィッティングは苦労なしでした!
そして、満を持して、ガソリンスタンドに押していきます。押して歩くにはちょっとあるけど、満タンでどのくらい入るか試したい!
暑い日でしたが頑張って押すこと15分。いよいよガソリン注入。妻が「いきなり満タンにするの?漏れてたら大変じゃない?」と縁起でもない事を言った事を思い出し、1リットル弱入れて漏れを確認。うん、漏れてないよ。
気を良くして、どのくらい入るか楽しみに給油していたその時!足元に液体が!ガソリンが漏れてるー?!
すぐに止めたため被害は最小限で済んだけど・・・漏れの場所を確認すると、なんと常用側のホースが破断していました。純正と少し取り回しが変わり、ただでさえ古くなって硬化していたところに無理がかかり、破断してしまったのでしょう。
「ちょっとホースが古そうだった」。この時点で交換に踏み切るべきでした。後悔。そして心が折れました。
今日中に仕上げ、明日職場に乗っていって泊まりの勤務後、その翌日にレッドバロンでFスプロケのオイルシールの打ち替え工事の予定でした。しかしそれもままならなくなりまして、引取りに来てもらうことに。
オイルシール打ち替えついでに、ホースの交換と、ついでにスプロケ15Tへの換装もお願いしちゃいました。これで一気にツアラー化が2段階進む事になりますが、なんか後味悪い・・・
反省
ゴムパーツは消耗品、惜しまない!ビッグタンク交換の時に変えたほうが良さそうなもの。
・タンク~コック~キャブまでのホース
・燃料コックの中身のパッキン、Oリングとうねったワッシャーも、かな。
後日、フレームとのクリアランスがほとんど無かったリザーブ側の吐出口が心配だったので、タンクの真ん中のシート下のボルトにスペーサー咬ませて、クリアランスを確保する作業を追加しました。「フィッティングは苦労なし」なんて、甘い!!
ガソリンは漏れるとゴムパーツを攻撃するから、気をつけないと。あと、ガソリンのついてた衣服を乾燥機に入れると発火するとか、わりとヤバ目な物質なんですね。そこらじゅうに普通に売られて素人でも扱っている物だからマヒしがちですけど。
そして失敗ごとに学習する!・・・はずなんですが、どうも3歩進んで2歩以上下がっているような気がしています。これが老化と、いうヤツなんでしょうかねぇ。職業柄、よくそんな事を考えます。
以上、お年寄りを大事にしよう!という話でした(違